新型コロナウイルス感染症拡大を受け、2020年4月に発出された「緊急事態宣言」。その前後で接骨院業界のレセ枚数や窓口単価がどう変化したのか。その推移と日本国内の消費動向の変化を取りまとめたデータを公開します。(2020年11月19日に公開した情報を更新したものになります。)
2020年4月、新型コロナウイルスの感染防止を目的に「緊急事態宣言」が発出されました。
その影響は大きく、観光、宿泊、スポーツ、イベント、飲食などを中心に業種業態を問わず大きな経済危機となったことは記憶に新しいと思います接骨院も例に漏れず、なかには売上が5割減になってしまったという深刻な事態も耳にしました。
しかし「緊急事態宣言」が解除された5月以降、接骨院業界が急激なV字回復を見せたことはご存じでしょうか。
例えば、窓口合計金額の全国平均値※は、10月に前年同月から約50万円も上昇しています。
レセ枚数の全国平均値は、少し時間はかかりましたが2020年8月に前年同月の数値を上回ることができました。
詳細なデータは下のほうで紹介させていただきますが、数字で見る接骨院業界は「新型コロナウイルスの影響からのV字回復」ではなく、それ以前を上回る好景気になっていると言えるかもしれません。
※全国平均値は当社のサービス「レセONE プラス」「Ligoo POS&CRM」導入院のデータから算出「緊急事態宣言」前後の接骨院業界のデータを見る前に、まずは新型コロナウイルスについての主な出来事と消費支出の推移を時系列で確認してみましょう。
新型コロナウイルスの世界的大流行は、私たちの生活を一変させました。
国内で初めての新型コロナウイルス感染者が確認されたと発表があったのは2020年1月6日のことでした。この発表以降、新型コロナウイルスに関する報道が急激に増え始めます。
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号での集団感染、国内で初の死者、感染者数急増、東京五輪延期といった事象を経て、4月に「緊急事態宣言」が発出されました。
ここからさらに、日本国内の消費支出が大きく落ち込みます。
接骨院でも、3月~4月は来院する患者様の数が大きく減ったのではないでしょうか。
5月25日に「緊急事態宣言」が解除された後、6月には感染拡大防止のための移動自粛要請も全国で解除されます。
消費支出は一定の回復を見せて、「緊急事態宣言」が発出される以前の景気まで持ち直した業界もありますが、日本経済全体としては、10月まで対前年同月比がプラスになることはありませんでした。※
前述のとおり、接骨院業界では「緊急事態宣言」が解除された5月以降に急激なV字回復を見せております。特に窓口合計金額は好調で、 当社でデータ集計を開始してから初となる200 万円超えを7月~11月に達成しました。
これは、苦しい時期を耐えて努力した結果、コロナで足が遠のいた患者様に再び戻って来ていただけたということではないでしょうか。 どんな状況下でも患者様との継続的な関係性は、データ分析による適切な顧客管理で作りあげることが可能です。
それでは「緊急事態宣言」が発出された前後(2020年1月~11月)の、全国接骨院平均値データを確認していきましょう。
※2020年11月30日 時点2020年のレセ枚数は3月から4月にかけて大きく落ち込んでいますが、そこから徐々に上昇していき、 8月には対前年同月比がマイナスからプラスに転じました。
しかし、レセ枚数は年単位で見ると減少傾向にある項目です。 日本人口の減少や接骨院数の増加で1院あたりに見込まれる患者様の数が減っていっているためです。
この傾向を踏まえて、いかに「売上をあげる」かが業界全体の課題となっています。
「緊急事態宣言」が解除された5月に、対前年同月比が4月から約15ptも上昇しています。 ここはグラフの中でも目立つ箇所ではありますが、それとは別に注目していただきたいのが「緊急事態宣言」が発出された4月の対前年同月比です。
2月から大きく落ち込んではいますが、それでもマイナスにはなっていません。窓口単価は業界全体で上昇傾向が強い項目と言えます。 これは、多くの院が患者数の減少を「自費メニューの導入」によって単価を上げることでカバーしていることが背景にあると予想できます。 他にも療養費の減少など、業界は確実に変化しており、「自費メニューの導入」は避けて通れない時代になっています。
窓口単価と同様に業界全体で上昇傾向にある項目ではありますが、 こちらは「緊急事態宣言」が発出された4月に対前年同月比がマイナス20%まで落ち込みました。
しかし、そこから急上昇が続き、10月には対前年同月比を33%まで上昇させています。 これは「緊急事態宣言」が発出される前の数値も上回っており、接骨院業界が「新型コロナウイルスの影響からのV字回復」ではなく、 それ以前を上回る好景気になっていると言える代表的なデータとなっています。
ここまでのデータで分かるように、接骨院業界では2020年1月から4月にかけて大きく売上が減少しました。 しかし、5月に「緊急事態宣言」が解除された後、それ以前を上回る勢いでV字回復しています。
日本の消費支出の対前年同月比が2020年10月までプラスになることができなかった事を考慮すると、この数値は、接骨院のニーズが市場にきちんとあり、 各院がそれぞれ独自の創意工夫と努力をしてきたことの証明でもあります。※
今回、公開させていただいたデータが先行きの不透明感が高まる業界で、患者様の消費動向を捉える一助となれば幸いです。
※2020年11月30日 時点